今回は、私が現在取り組んでいる2つのオリジナル生地について紹介します。
3度目となる生地づくりのテーマは「つくる楽しみを共有する」こと。
これまでのように歴史衣裳の構造を探る実験的なものではなく、洋裁を愛する人・洋裁を始めたての人が針を進めながら「縫うことって楽しい」と感じられる生地を目指しています。

先日の記事では「楽しさとは苦しみの先にある」と書きました。
難しいからこそ面白い。
整えられた市販品では決して味わえないのが、半・分解展ならではのものづくりの醍醐味です。
生地においても、異なる難易度を持つ2つの道を用意しました。
ひとつめは「フランネル」
葛利毛織が半世紀以上にわたり織り続けてきた、まさに定番中の定番です。
丈夫で縫いやすく、仕立て映えする。
スタンダードでありながらクラシック。
これ以上に安心できる生地はありません。
ただ私は、単なる復刻ではなく、葛利毛織の歴史の中で失われてしまった色を掬い上げたいと考えました。
歴史的な衣服の造形美を際立たせるために、最高峰のフランネルを仕立て直すのです。

もうひとつは「タフタ」
こちらは一筋縄ではいきません。
18世紀の婦人服に用いられた細番手のシルクタフタを、現代においてウールで再構築しようという試みです。
チェック柄の婦人服、そして「シルクからウールへ」という転換。
どれも私にとって未経験の要素ばかりであり、新たな挑戦です。
18世紀の生地は、軽やかで繊細なシルクのきらめきに満ちていました。
その世界をウールでどう表現するのか。
糸選びから織りの設計まで、試行錯誤が続いています。

「フランネル」は確かさと伝統の象徴。
「タフタ」は未知への挑戦。
この2種類の生地づくりを通して、私はあらためて「布を織ること」と「服を仕立てること」の奥深さを感じています。
次回は、チェック柄に込めた想いをお伝えします。