Crinoline Visite Making Guide

Making Guide

このページではCrinoline Visite(クリノリン ヴィジット)をつくる方に向けて「想像力を刺激するアイディア」「構造を理解するヒント」を提供します。

あなたらしいクリノリンヴィジットを仕立てる一助になれば幸いです。

 

クリノリンヴィジットを製作するにあたり、必要な生地の用尺を表にまとめました。
例えば、サイズ4で生地が110cm幅の場合は「3.5m」必要になります。

サイズ7は生地幅110cmと150cmで用尺が同じです。
パーツが大きいアイテムなので、このような結果になりました。

パーツに剥ぎを入れて、上手く分断することで、上記表よりも用尺を詰めることが可能です。





さて、私が思うクリノリンヴィジットの特徴は「足し算の美学」です。
華美なデザインを受け止める、揺るぎない骨格を持った設計だと感じます。

オリジナルを見ていると、チャームやレース、タッセルにフリルなど、さまざまな装飾を重ね付けしたデザインを数多く確認できます。



首元や裾には大ぶりなチャームが何個も連なり、フロントの開閉部にも同様のチャームが用いられています。


背面の腰部分には立体的なチャームからタッセルが下がり、迫力満点のデザインです。
このように装飾モリモリに仕立てた方が、クリノリンヴィジットらしいのです。

皆さんも楽しみながら好きなように味付けしてみてください。
ちょっと濃い味でも、しっかりと受け止めてくれる骨太な設計になっています。

 





この1着は、コットンテープを各縫い目に走らせ輪郭を強調しつつ、フリンジやタッセルの装飾で味付けをしました。




首元は、まるで衿が付いているかのようにコットンテープで輪郭をつくり、その空白をフリンジで埋めています。

遠目から見ると衿のようで、衿じゃない。
ギミックのあるデザインにしています。

縫い目に沿ってコットンテープを留めつけることで、クリノリンヴィジットの独特な構造美が可視化されます。
それだけで充分に目を惹くデザインになりました。



こちらはダークトーンでシックにまとめてみた1着です。
衿元や袖口は、ボリュームたっぷりのフリンジを二重に縫い付け、裾にはスカラップの装飾を挟み込みました。

モリモリの装飾ですが、色味を合わせているので落ち着いた印象になっています。

背中のウエスト部分には、ワンポイントとして、ブロンズのヴィンテージチェーンとボタンを縫い付けています。


衿元のフリンジは、間近で見るとボリューム満点で迫力があります。



こちらはアンティークレースとアンティークボタンを主役に仕立てました。
先ほどと同じように、色味を抑えてシックに大人っぽくまとめています。






大ぶりなレースをショルダー部分に手作業で縫い付け、これまた大きなボタンをフロントとバックに飾りボタンとして配置しました。





大胆にアレンジをした一着もご紹介。
衿をセーラーカラーにして、着丈を+20cm伸ばしてロング丈にしています。


バサッとロングコートのように羽織っていただけます。



セラーカラーにするだけで、ガラリと印象が変わります。
ぜひセーラーカラーにも挑戦してみてください。






クリノリンヴィジットを「総柄生地」で仕立てるのもおすすめ。
各パーツが大きいので、柄がよく映えます。

総柄生地なら装飾も最低限につくっても、迫力満点ですね。
こちらも着丈を+20cmしたロング丈verです。






この柄物生地は、着物の反物です。
着物を再利用してクリノリンヴィジットに仕立て直すのも面白そうですね。



Image source: The Englishwoman's Domestic Magazine, 1871. Wikimedia Commons.



Image source: Fashion illustration featuring French ladies accompanied by a gentleman, Les modes parisiennes réunies, 1854. © Deutsches Historisches Museum.



Image source: Petersins March 1862. pinterest


Image source: La Mode illustrée, 1867. Library of Dance

 

当時のイラストにはさまざまな装飾を施したクリノリンヴィジットが確認できます。
特にタッセルやフリンジなど、歩くたびに揺れる装飾が人気でした。

 


クリノリンヴィジットの機能的な特徴に「隠し袖」が挙げられます。
袖の内側に、もう一枚の布が折り畳まれており、腕の動きに合わせて開閉するのです。
(上記画像、左が通常時:右が運動時)


これは19世紀の典型的な女性像である " へその上で両手を重ねた慎ましいポーズ " をもっとも美しくみせる設計です。



私が販売する型紙では、袖の折り畳まれる位置を上昇させ、美観はそのままに腕の可動域を大幅に広げています
(構造的にはピボットスリーブという狩猟服の設計に酷似しています)



通常時は自然に袖が腕を包みます。
ふんわりとしたボリュームが印象的。


そして運動時には、内側の布が腕に合わせて開閉します。
折り畳まれる基点を高い位置に設定しているので、ストレスなく腕を動かすことができます。






続いて、オリジナルの裏地を確認してみましょう。
基本的に「総裏仕様」で、見返しや裾の折り返しがつかない「即裏」が一般的です。

私の販売する型紙も同じ仕様にしています。
初めてつくる方は、この仕様が一番簡単で綺麗に仕上がると思います。


内ポケットにご注目ください。
大変ユニークな仕様になっています。

「内ポケットの向き」が分かりやすいように木の枝を差し込んでみました。


なんと、上の小さなポケットが「横向き」に付いているのが分かります。

ところが、下の大きなポケットは通常通り縦向きです。
文庫本が入るくらいの実用的なサイズです。


小さな横向きのポケットは、左右についています。
サイズは、ちょうど女性の指先が入るくらい。
恐らく指先を温めるための「フィンガー・マフ・ポケット」と考えられます。


当時、女性たちのあいだでは、手を温めるための「マフ」というアクセサリーが流行しました。
マフの機能を直接ヴィジットに取り込んだ設計なのでしょう。


このセーラーカラーにアレンジしたクリノリンヴィジットは、オリジナルと同じく「総裏」の「即裏」で仕立てました。

フィンガー・マフ・ポケットも付けています。



フロント上部はボタン開閉にし、そこから下はゴンドラ社の「スナップ」にしています。


こちらは、総裏で「大見返し」の仕様です。

見返しの付かない即裏ですと、生地よってはヘタってしまいシルエットが崩れます。
大見返しにすることで、胸から肩までのボリュームを支え、美しい造形を描くことができます。


後ろ姿です。
アームホールはパイピング処理にしています。
クリノリンヴィジットのアームホールは、パイピング処理が一番簡単で綺麗に仕上がります。


この1着は「大見返し+背ウラ」です。

生地が丈夫なメルトンウールなので、裏地を付けずに製作しました。
ただし、フロントは綺麗にみせたいので大見返しにしています。


もちろん各内ポケットも完備しています。
大見返しをそのままポケットの袋布として利用しています。


滑りを良くするために、必要最低限の背中上部にのみ裏地を付けています。
また袖の上部にも同じように小さな裏地を配置しました。

アームホールはコットンテープで処理しています。




こちらも同じく「大見返し+背ウラ」です。


アームホールのパイピングのみ裏地を使用し、それ以外は共生地で製作しました。
身頃の裾や袖口などは三つ折りです。


フロント開閉は、ゴンドラ社のスナップ。
簡単に手付けできますから、洋裁初心者の方にもおすすめの着脱方法です。

 

 

最後に「クリノリンヴィジットの縫い手順」を簡単に説明します。

まずは、身頃のみを縫って「ベスト」の状態を完成させてください。
裏地やポケットなど全部完成させて、袖が付く手前まで仕上げます。

 

袖は袖で完成させておきます。
独特なかたちをした袖ですが、どの部分がどこに縫われるか型紙に記載しているのでご安心ください。

 

一番最後に袖を付けて、完成です。
総裏の場合、身頃の裏地ごと貫通で縫い付けます。
裏地がずれないように躾などをしておくと良いでしょう。

上記手順はあくまで一例です。
試行錯誤しながらじっくりと縫い進めてください。


ぜひ、この可愛いらしい羽織り「クリノリンヴィジット」をおつくりください。

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