2年ぶりの大阪開催となった「半・分解展」
10日間という短い会期でしたが、無事に駆け抜けることができました。
ご来場くださった皆さん、応援してくれた皆さん、ありがとうございました。
今回のBlogは2年ぶりの大阪展をゆるやかに振り返り、今後に繋がる要点をまとめます。いつも応援してくれている皆さんへの、やりきったよ!という報告と、私自身の備忘録も兼ねて。

不安が募る開催前
個展を毎年2回、9年間続けてきました。
何度経験しても開催前は心がざわざわするものです。
ただ幼少期から変わらず、頭は能天気。
「ま、なんとかなるか」と生きてきて、それなりになんとかなってきました。
この適当な思考回路は父による影響が大きいです。
私の記憶のなかの父は、常に「火」とともにあります。
中高生のころ、部活から帰ってくると決まって父は庭でたき火をしていました。
普段はほとんど喋らない父でしたが、たき火の時間はお酒も入っていて上機嫌。
ひとつの炎をふたりで見つめながら語らう親子の時間が好きでした。

「長谷川家の男は、なんだかんだ成功する」
この言葉を父の口から何度も聞きました。
なにかしら話しの終わりには、必ず耳に入ってきたフレーズです。
なにひとつ根拠はありませんが、自然とそーゆーもんなんだなと認識するようになりました。
結果、心が焦っていても、頭ではなんとかなると考えています。
ゆらゆらと火が揺れるように、熱く自由に。
それくらいぼんやりとしたイメージで生きています。

そして、痛恨のミス
もう少し考えろよ!と、自分に強めのツッコミを入れたくなるミスもしっかりとやらかしています。
それは展示会場で、本の " 売り切れ " が頻発してしまったこと...
買えなかった皆さま申し訳ございませんでした。
3連休から始まった大阪展。
「まぁ、100冊あれば足りんだろ」と適当に発注し、2日で完売。出版社はお休み。
急いで妻に連絡し、東京の自宅から50冊を送って貰うも1日で捌ける。
追加の200冊が出版社から届くも3日と半日で完売...
10日間の期間中、4日間は本が無い状態でした。
こんなにも多くの方に手を取ってもらえるなんて、想像以上の反響に驚きと反省が交互に押し寄せてきました。

著書「あたらしい近代服飾史の教科書」
12月25日まで、特別版を販売しております。
まだお手元にない方は、この機会にぜひ。

生きた布 と 死の衣服
今回の大阪展の会場は、こんな感じです。
「生きた布 と 死の衣服」をテーマにし、危険を孕む婦人服・リメイクされたドレス・貴重な下着類を中心に、18世紀から20世紀初頭の衣服60点以上を並べました。
「生きた布」とは、布が貴重だった時代を指します。
18世紀から19世紀半ばごろまでドレスは、ほとんど布にハサミを入れずに仕立てられていました。
そのため、縫った糸を解けば布の状態に戻すことができ、容易にリメイクすることができて何度もお直しされ、布は生き永らえました。

そして「死の衣服」には、ふたつの意味を込めました。
ひとつは文字通り、死の危険性をも孕んだ衣服という意。
19世紀の女性用乗馬服がその代表例です。
貴族文化に根差した「横乗り乗馬」は、ときに女性の命をも奪いました。
19世紀半ばの巨大化したスカートや合成染料の発展も、痛ましい事故を起こした歴史があります。

布が死にゆく様子
そして、死の衣服に込めたもうひとつの意味が、布が死にゆく過程なのです。
第二次産業革命が勃発した1870年ごろから、布にハサミを入れ、布を切り刻んで仕立てたドレスが生まれます。
それは布の価値が下がったこと、ミシンが普及したこと、百貨店ビジネスが生まれたこと、鉄道と写真が世界との距離を縮めたことetc...
さまざまな複合的要因が重なり、衣服の仕立てそのものが、まったく異なるものへと変貌したのです。
その様子を表現するため、仕立てが分かりやすいように「裏返し」の状態で1850年から1880年までのドレスを展示しました。

光り輝く「下着」
既製服発展の影で、下着は隠され忘れ去られてきました。
布の生死を分けた裁断技法は、下着にも適用され、スーツやドレスの下で大きくかたちを変えています。
布が生きていた時代、ドレスがリメイク前提のために荒く縫われていたのに対し、下着は唯一「洗濯」が可能だった衣服。
洗濯や漂白のために耐久性を重視した縫い目は、現代のコンピューター制御のミシンでも再現不可能なほどに、細かく均一です。
狂気的な手縫いを前にして言葉を失う方が大勢いらっしゃいました。
「これはミシンですか?まさか手縫いじゃないですよね?」と何十名もの方に質問されました。

子供との日常
あっという間に大阪展も終わり、東京に戻ってきて5日目。このBlogを書いています。
いつものように午前中は三男と散歩にでかけ、夕方には次男の買い物に付き合い、習いごとに行く長男を見送る日々。
またゆっくりと時間が流れていきます。

たった二週間弱、離れただけでも東京の紅葉は進み、いつもの散歩道がイチョウの黄色に染まっていました。
今、枝の先で踊るのはもみじの朱色です。
子供の成長も早く、三男のお喋りは日に々に達者になっていきます。
大阪の初日に三男は3歳になり、大阪の最終日に長男は10歳になりました。

お待たせしましたの、型紙販売
ゆっくりと過ごしていていますが、やることはたくさんあります。
展示会場で見た衣服たちを、自分の手で縫いあげるまでが半・分解展です。
遠足は家に帰るまで。
半・分解展は縫いあげるまで終わりません。
2025年は結局、2回しか型紙販売をできませんでした。
このチャンスをどうかお見逃しなく。
型紙をご購入いただくことは、そのまま半・分解展の継続に直結します。
たくさんのご注文をお待ちしております!

順次発送していきます!
すでにご注文いただいている皆さま、お待たせしております。
順次発送していきますが、発送までに2~4週間ほどお待ちいただいております。
申し訳ございません。
書籍や型紙、ひとつひとつ丁寧に送ります。
年をまたいでしまう方もいると思います。出荷が完了しましたら、メール通知が届きますのでもう少々お待ちくださいませ。

そして、東京展
やっぱり年末に東京でも展示がしたいと思い「アール・ヌーヴォーとスーツ展」を渋谷で開催します。
ミニ展示にはなりますが、厳選した15点ほどの衣服を並べます。
1890年から1910年ごろまでの女性用スーツが中心になります。
同時代のドレスも数点並びますので、ドレスと共に発展した「女性スーツの美しさ」をお楽しみください。
12月10日から13日まで、4日間のみの開催です。
入場チケット販売中。

今回の写真に使用したレンズは、1960年から1970年代に旧ソ連で製造されたオールドレンズ「Helios44 58mm F2」と「Jupiter9 85mm F2」を使って撮りました。
どの写真も、「撮って出し」です。
つまり、PCなどで加工せず、シャッターを切って撮れたそのままの写真です。
なんだか味があって良いですよね。
ちなみに、展示会場の全体写真のみ7artisan 35mm F1.4を使用しました。
カメラは「SIGMA fpL」
お気に入りの相棒です。(現代レンズを付ければ、キレッキレの写真が撮れます)