小さく始める、大きな挑戦

gawa

前回の記事で「ブランドを始める」なんて、大それたことを言いました。
だけど私が思う始まりは、小さく確実に踏みしめるような第一歩。
新たな道に進むのではない、これまで歩み固めてきた道の先頭で、かるくスキップをするくらいには楽しみたい。
スモール イズ ビューティフル。そのほうが、私らしいのです。

 

私自身がつくる服の原点は、半・分解展の「試着サンプル」です。
それは、型紙に付属する【構造美の具現化装置】であると前回の記事で説明した通り、余計なものをそぎ落とした、とてもシンプルな服でした。
ポケットもなければ、裏地もありません。
ただ着心地と構造だけを、静かに置いたものだったのです。

あるとき、ひとりのデザイナーに言われました。
「なんでもっと試着サンプルをつくり込まないの?」

その言葉は、デザイン画もレポートもろくに提出せず、一心不乱に服を縫い続けていた学生時代の私を知っている彼だからこそ、自然に口からこぼれたのでしょう。


その一言で、試着サンプルは「一点物の服」へと変化していきました。
ポケットもある、裏地もある。
質にこだわり、素材も自由に選んだ、完成度の高い服。
すると「試着サンプルを購入したい」というお客さまも増え、新たな収入源としても確立していきました。

それらは間近で見れば、一点一点が個性的で面白い。
しかし、離れて見ると統一感に欠け、構造美を魅せるという目的も希薄になった状態でした。

そしてまた、ひとりの人物の言葉が背中を押しました。
「素材を揃えると、もっと力が出るよ」

私ははっとしました。
好きなようにつくる自由もいい。
けれど、統一感を持たせたとき、服はより研ぎ澄まされ、ブランドとしての輪郭が見えてくる。

今、その輪郭をかたちにしようとしています。

小さなひと言が、その時々の道しるべ。
次回は、「素材の道」をご案内しましょう。


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